「挨拶」は禅の用語から生まれた「心と言葉の戦い」

挨拶には「一言、ご挨拶を申し述べます」などのように仰々しいものから、「やあ!元気ですか」などというように軽いタッチのもの、お辞儀をする、握手をする、手を振るなど、お国柄によっても様々です。言葉だけでなく、動作(行動、態度、表情など)とも組み合わさって相手に伝わります。
日本における挨拶の由来は、仏教の禅の用語からとされています。「禅問答」において、相手の力量を測るための積極的な攻め込み、突き進み(「挨=開くの意」)に対して、すかさず切り返す、切り込む(「拶=迫る」)状態を、「一挨一拶(いちあいいちさつ)」といいます。
一方が言葉を投げかけて、その反応から相手の値踏みをするわけですから、決して油断できない「心と言葉の戦い(戦場)」です。互いに相手の境地、力量を見定め合う丁々発止のやり取りの様子で、ビジネスの場と酷似しています。やがてこの状態を、「相手に気を向け、向けさせて、心を測り、心を通わせる手段」として捉える様(さま)として解釈されるようになって使われているのが、今日一般的に交わす「挨拶」です。
挨という字には「開く、押す、迫る、近づく」、拶には「迫る、近づく」、という意味があり、互いに心を開いて接し、認め、信じ合う人間関係を大切にする言葉でもあり、所作でもあるのです。
参考:『東京IT新聞 「IT坊主の無駄方便」』