説話(幸福感)

人はこの世に生まれたときから“競争社会”の一員になります。勉強をしていい大学に入るのも人よりいい人生を歩むためという大義名分で、社会に出れば出たで他社に負けるなと尻を叩かれ会社の同僚も出世のためのライバルとしてしか存在しなくなっていきます。こういう競争世界が現実であると知っていながら人々(マスコミ等含め)は「共存共栄」こそ人間の幸せの原則であると言います。
誰もが、他人のことを考えて行動すれば世の中はうまく行くと知ってはいるはずですが、なかなかそうは出来ません。文明は人間の競争本能が築き上げてきたとも言えます。
競争には勝つものと敗れるものが存在します。負ければ悔しい思いに駆られ、勝てば勝ったで相手に嫌われたり、人を敵に回したりすることもあります。負けた人間はプライドを傷つけられ、勝った人間は、自分がさらに強い競争の標的になることを自覚し、両者とも精神的に大きなプレッシャーとそれに伴うストレスに見舞われることになっていきます。となると、勝っても負けてもそれ自体がストレスとなってしまい、一見、生き方として幸福感には程遠いようにも思えることがあるかもしれません。しかし、適度なストレスはやる気と生きがいに繋がることも多くあります。仏教の言葉のひとつに「苦もまた生である」というのがあるのはこういった所以なのかもしれません。
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参考:「パティパダー巻頭法話」(http://j-theravada.net/howa/howa1.html):A・スマナサーラ長老より抜粋・編集