説話「自讃毀他戒(じさんきたかい)」

自分を誉(ほ)めて人を悪く言うのを自讃毀他と言います。毀(き)は、そしるとか、けなすという意味です。
人が何人か寄ると、あの人はいい人だという話しはなかなか出なくて、どうも悪口の方が多くなってしまうようです。集まって一杯やりながら人の悪口を言っているのも楽しいかもしれませんが、その反面で自らの心をせっせと汚していることに気付かねばなりません。
又、自分に関る我が子、孫、身内への誉め言葉や自慢話が多くなりがちで他人にとっては、耳障りのよいものではありません。「私はこんなに立派な事をしています」ということも、言いたい誘惑にかられます。認められたい、誉められたいという我欲がつい出るのです。ところが、これが自分も他人も害することに気がつくべきです。自分には慢心を育て、人の気分を悪くするからです。また、人を悪く言うことは、自分の立派さを認めさせたいという、自信のない気持ちの裏返しですから、自分を誉めることと同じなのです。人を誉めることができる人は、自分はまだまだ駄目だと思って努力できる人で、こういう人はどんどん大きくなれます。自分の中には謙虚さと率直さを育て、人にはもっとやる気をおこさせて、自他共にこんなに善いことはありません。
このように、「自讃毀他戒」は自らの心を清らかに大きく育てる上で大切な戒めなのです。
eお坊さんねっと 説話集より
参考:「天台宗法話集より抜粋・編集