日本語あれこれ(下駄を預ける)

“げたをあずける”という表現を耳にすることはありませんか。これは「相手にすべてを一任する」ことです。
昔の日本の履物は下駄や草履(ぞうり)でした。その当時は、仕事の関係で相手先や料理屋などに出向いた場合、先方が用意した部屋に通されて打ち合わせ(交渉)などを行います。こういった場所(屋敷や料理屋など)には大抵、下足番が居て客の履物を預かったのです。料理屋の場合は玄関の整理という意味合いもあるでしょうが本来の目的は食い逃げの予防という意味合いが強かったようです。つまり相手からすれば「下駄」という人質を取っているのです。下駄を預けた本人は預けた下駄を返してもらうまでは何処へも行けません。預けた瞬間から自由でなくなります。この言葉「相手に一任する」という意味合いを勘違いして、相手を信頼しているという意味で使うのは誤りです。相手に下駄を預けるということは、自分で自分の行動を封じることです。事の一切を相手の思うままに任せるという意思表示となるのです。
例えば次のようなことに直面したことは無いでしょうか。「金額だけが書かれていて以下余白の見積もり書」とか「金額と内容が一式とだけ記載されている見積もり書」で契約(了解)してしまった。
これらは、条件も前提も詳細(具体的な明細)もない白紙委任状態で下駄を預けたと同じです。ご用心!ご用心!
IT坊主のひとりごと「IT坊主の無駄方便」集より