「一大事」

一大事とは、「国家の一大事」「簡単には解決できそうもない大きなトラブル」「人生の一大事」「放置できない重大な我が家の一大事」など、容易でない事態で、悪い影響をもたらすような物事が起こったときに使われる言葉です。
「もろもろの仏は、ただ一大事の因縁をもってのゆえにのみ、世に出現したもう」。
この言葉は、仏教経典の一つである『法華経』の中の一節で、意訳すると、「すべての仏たちは、ただ一つの大事をなすためだけにこの世に現れる。その大事とは仏の行う偉大なことで、すべての衆生(人)の能力・気質・境遇などの違いを越えて、等しく自らと同じ知見を得させ、覚りに至らせる」ということです。その意味合いは、次のように説明できるでしょう。「お釈迦さまをはじめ諸仏(仏たち)は、仏法をもって重要な由縁(人が生まれた意義、教えを説く意義など)について、皆等しく衆生済度(人々などを救う)することを生涯の使命として、この世に誕生(出現)したのです。これを一大事と言うのです」。
元々は仏がこの世に出現し、大切な仕事を行う状態を指して一大事と言い、良い意味(ありがたい状態)を表す言葉でした。これが一般に広まり、やがて重大な出来事を意味するようになり、それが時代の変遷とともに使われ方が変化しました。その結果、主に悪い意味で大きな問題などが起こった時に使われるようになったのです。
『東京IT新聞 「IT坊主の無駄方便」』より抜粋編集