説話(人間と犬の会話)

人間と犬の会話です。
『人間:犬よ。君たちよりは私たちの方が偉いんだよ。
犬:私はそうは思いません。なぜあなたはそう思うのですか。
人間:私達はビルや高速の乗り物、薬も開発するが君たちにはできません。
犬:そうしなければ生きていられないあなた達は苦労が多いことでしょう。
人間:私達はいろいろとむずかしい仕事をして楽な生活をしています。
犬:私達はしっぽでも振ってかわいい顔さえ見せれば人間が全面的に面倒を見てくれる。そのほうが楽で楽しいですよ。結局は人間も、何かを食べ、楽しみ、苦労の多い人生を終えて、死ぬ。我々も、何かを食べて楽しんで、生きる苦労などあるのかどうかも知らずに死ぬ。そうは思いたくはないけれど、あなたと話すと、我々犬の方が偉く賢く感じられますよ。』
遂に、会話に負けて悔しがった人間が賢者に愚痴をこぼします。
すると賢者は人間に言いました。
「人間ならではの優れたものとして、道徳、性格、人格などといった表現で言われているものがあるでしょう。道徳を守ることも、人格の向上も、自分のことだけではなく、すべての生命のことを考えて行動することも、人間にしかできないのです。これらは“こころ”のことです。いずれ無くなってしまう物を追いかけるのではなく、『徳』や『智恵』を、生きている間に開発することが何よりも大事で、これが人間たる所以です。」
eお坊さんねっと 説話集
参考:「パティパダー巻頭法話」(http://j-theravada.net/howa/index.html):A・スマナサーラ長老より抜粋・編集