説話(人が持っている能力)

生命には、生き延びるために生まれつき何かの能力が備わっています。食べ物を手に入れること、身を守ること、安全な住処を見つけることが必要です。子孫を残すことも、生きるというプログラムに入っています。地球上にいるさまざまな生命を観察すると、これは理解できることです。獲物をとるチーターの足はとても速い。走る能力のないライオンは群れの連携プレイで獲物を捕る。サメはわずかな血の匂いでも感じ取る。コブラの牙には毒入りの袋が付いている。フクロウやコウモリは超音波を出したり受信したりする能力を持つ。カメレオンの舌は神技で昆虫を捕らえられるようになっている、という具合です。
人間も同じ生命ですが、生まれつきこのような能力が具わってはいないのです。毒も、角も、早く走れる脚も、鋭い牙も、カモフラージュできる皮膚もない。肉体の能力から比較すると、一番弱い生き物かもしれません。しかし人間は食物連鎖の頂点に立っているのです。他の生き物に比べて一番強いということになります。
人間の能力は、脳です。脳の使い方は他の生命と違います。人は考えることを武器にしているのです。人であるが故の能力とは思考をする力です。行動のおおもとは思考なのです。但し使い方を間違えないことです。思考能力を取り上げたら人はこの地球上から瞬く間に消えてしまいます。

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参考:「パティパダー巻頭法話」(http://j-theravada.net/howa/index.html):A・スマナサーラ長老より抜粋・編集