方便(ほうべん)

嘘をついた後に弁解の意味で「うそも方便」という言葉がよく使われますが本来は少しニュアンスが違います。
方便とは本来、我々(人々)を導く為の優れた教化(教え導く)方法や、巧みな手段を意味します。この方便の考え方は『法華経』とういうお経の中でたとえ話として説かれています。その中の一例ですが、
『あるところに大金持ちがいました。財産も使用人もたくさんいて邸宅はとても大きく立派でしたが、門は一つしかありません。ある時この邸宅が火事になり火の回りが早く、あっという間に火に包まれてしまいました。主人は自分の子どもたちを助けようと捜しましたが、子供たちは火事に気付かないのか、無邪気に遊んでいます。外に出るように声をかけますが言うことを聞きません。そこで主人は子供たちが欲しがっていた、おもちゃを思い出します。子どもたちに「おまえたちが欲しがっていた車が門の外に並んでいるぞ!早く外に出てこい!」と叫びます。それを聞いた子どもたちが喜び勇んで外に出て行き災難から免れたのです。』
このように、方便とは本来の目的のために仮に用いる方法のことで単なるうそではないのです。
eお坊さんねっと 説話集より
参考:「天台宗法話集より抜粋・編集