説話「上品・下品(じょうひん・げひん)」

私たちは毎日の生活の中で人の性質・態度や、物の善し悪しを表現するとき「品性・品格・品質」という言葉を使い、「あの人は上品な人だ」「下品な言い方はやめなさい」「下品な色」というように人や物にそなわる様子や風格を表す時に「上品・下品」という言葉を使います。一般的にこれら上品・下品などいわゆる「品」について考えるとき、その人にそなわっている人間性や風格の優劣を、また物については出来映えや使い勝手などを指しますが、これらの言葉は仏教においては別の意味があります。
まず仏典において「品」には2つの意味があり、一つ目は「同類のまとまり」、二つ目は「種類」を意味します。
また、仏教経典の一つで『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』では、人が生前に積んだ功徳の違いに応じて人の「品」を9種類に分類(詳細は省略します)していて、これらを総称して「九品(くほん)」と言います。
以上のように、本来は全く違った意味を持っていた仏教用語の「上品・下品」が、人の性質・態度、物の善し悪しを表す言葉として定着してきました。近年一般に使われている「品質」という表現も仏教用語から生まれたものです。
eお坊さんねっと 説話集より
参考:「天台宗法話集より抜粋・編集