説話(幸せの原点)

昔、近所に空に向かって「有難うございます」とつぶやきながら合掌されるおばあさんの姿が子供心に強く印象に残っています。その当時(戦後間もないころ)の田舎はほとんど皆、質素な生活です。おばあさんも同じでしょう。いつもおだやかで感謝にあふれた姿は幸せそうでした。「幸せ」とはこころに、安らぎと「有難いなぁ」という感謝のよろこびを感じている状態です。
詩人の相田みつをさんの詩に「しあわせは、いつも自分のこころがきめる」とあります。自分のこころが幸せと思ったら幸せです。質素な生活でもこころに安らぎと感謝の豊かなよろこびがあれば幸せです。逆に、経済的にも社会的にもどれだけ恵まれていても、それを当たり前としてこころに感謝のよろこびがなければ幸せとは感じられないでしょう。外側にある条件が「幸せ」を決めるのではありません。外側にある条件は移ろいやすいものです。「幸せ」を感じさせるものは、あくまでも自分のこころに安らぎと豊かなよろこびがあるかどうかではないでしょうか。
「IT坊主の無駄方便」/eお坊さんねっと 説話集より
参考:「天台宗法話集より抜粋・編集