説話(出世)

「彼も出世して部長になった。」、 「同級生では出世頭だ。」などと使う『出世』という言葉は、ほめ言葉のひとつです。世の中で相応の地位、身分になることを意味しています。
本来は、「人々を救うために、仏が この世に出現するという意味と、世俗的なものを超えて仏の世界に入る(出世間=出家)」という意味合いであったのです。
この言葉が日本に伝えられ、貴族などが仏門に入ると普通の人よりも昇進が早く高い地位に就けば名前も知られるようになるということから、一般に「身を立て、名をあげる」意味として使われるようになりました。しかし、いくら地位や身分が昇格しても、人柄や行動がそれに伴っていかなくては真の意味の出世とは言えません。本来の意味からいえば、世のため人のために働くということです。立場や地位が変わって、我欲の塊になったのでは出世とは言わないのです。
「ことばの旅」静岡県成道寺住職伊久美清智師著を参考&編集
「IT坊主の無駄方便」/eお坊さんねっと 説話集より