茶会の心得から生まれた「一期一会」

「一期」とは、「生まれてから死ぬまで」、「一会」は、主に法要などの集まりや会合のことをいい、ともに仏教と深い関係がある言葉です。この二つを組み合わせた一期一会は、「一生に一度だけの機会であり、生涯に一度限りしかないと考えて、大切にする」という意味合いで一般的に用いられています。
千利休(せんのりきゅう=桃山時代の茶人)の弟子である山上宗二(やまのうえそうじ)という茶人が、茶道の心得を示した書の中に、「そもそも、茶湯の交会は、たとえば、幾度おなじ主客交会するとも、今日の会にふたたびかえらざる事を思えば実に我、一期に一度の会なり」と書かれていて、“一生にたった一度の出会いだから、主人も客も万事に心を配り、実意をもって交わりなさい”と諭しています。
現在では、語源にある「主客ともに誠意を尽くせ」という意味合いが薄れて使われているのが一般的なのですが、そもそもの語源を知っている人や、お茶の心得のある人などからすれば、違和感のある使われ方と捉えられる場合があります。捉え方によっては、“私は真剣ですからあなたも真剣に接しなさい”になりますので、商売でお客様の目に触れるところへの掲示や表示などは控えるべき言葉です。
企業内の教訓や信条として使用することにおいてはなんら気にする必要はありません。まさに“真剣勝負”となる一語で、従業員の心構えを説くにも適した言葉の一つです。
参考:『東京IT新聞 「IT坊主の無駄方便」』