名著『ソフトウエア開発の神話』との出会

今や絶版になっていますが、『ソフトウエア開発の神話』(フレデリック・P・ブルックス著、山内正彌訳=1977年、企画センター)という著名な一冊があります。
ある銀行のバンキングシステムの開発で重大(品質不良、工程遅れ、原価高)な状況になった時、強いインパクトを受けヒントになった一冊の本、「遅れているソフトウェア開発プロジェクトでの開発要員増加は、作業の再配分や新規要員の教育、コミュニケーション、パスの急激な増加によって遅れをひどくする」という内容です。それまでの考え方は、遅れを回復するためには技術者を投入するというのが当たり前でした(今の時代も同じか?)ので衝撃です。
対策として、「遅れの回復には、単なる増員は行わない。精鋭体制に絞り設計から見直す覚悟で行う。」が基本方針です。具体的な対応としては一旦全体作業を中断、サブプロジェクト単位に現状の状況を整理・分析・評価し、次の3つに分類する。
(1)品質が予想内に収まっていて進捗(進みの程度)もほぼ予定内のサブプロジェクトは先へ進める
(2)製造工程が起因して進捗が悪いサブプロジェクトは製造品質向上作業の実施(製造関係者の集約と再配分)を行う
(3)設計見直しが必要なサブプロジェクトは顧客と一体で設計者による再レビュー及び設計・製造への展開を行う
この対応を見てお気づきと思いますが、例えば(3)の設計工程まで戻って見直しを行ったサブプロジェクトについては、ある期間(時間)設計者以外は不要になります。基本的には待機です。人がいるから割り当てる、という考えはやめるのです。ただし次工程を見据えて、製造担当は設計者の補助およびレビューへの参加、試験担当者は新たな試験のための準備作業などを割り当て、全体の効率化を目指します。
この考え方は、IT分野のみならず異業種においても応用可能です。過去に固執しない事が早道です。
補足:『ソフトウエア開発の神話』は絶版となり、その後原著発行20周年記念増補版として、『人月の神話』(滝沢徹ほか訳、丸善出版)との書名で発売されている。
『東京IT新聞 「IT坊主の無駄方便」』より抜粋編集