説話(花のこころ)

仏教では花をとても大切にしています。
花は美しく咲く日のために、寒い冬の間暗く冷たい地中でじっと耐え、春の訪れを待っています。その忍耐力は生き方の手本になります。
辛いことや苦しいことがあったとき、美しい花が飾られていると思わず掌を合わせたくなりませんか。それはお釈迦さまが指し示された忍耐の心を象徴するのが花だからです。
今の世の中、世界中の何処かで戦争が起こっています。憎しみには憎しみで返す人が多いからでしょう。
仏教には、憎しみに愛を返しなさいという教えがあります。これは何ごとにも耐える心を持ちなさいという教えで、これを忍辱(にんにく)と呼び仏道修行の徳目の一つになっています。忍という文字は心の上に刃が乗っています。移ろいやすい心の迷いを切り取る意味があるからで、忍耐は人生の苦しみや怒り、恐怖や欲望などの感情を抑える鎧(よろい)になってくれるという意味合いです。
仏壇の花がいつも拝む私たちの方に向けられているのも、仏さまが、厳しい寒さに耐えて咲いた美しい花を見たら「花の心をお持ちなさい」と諭(さと)されておられるからでしょう。
eお坊さんねっと 説話集より
参考:「天台宗法話集より抜粋・編集