説話「億劫(おっくう)」

お経の中にはいろいろな単位が出てきます。例えば、時間を表す「刹那(せつな)」、距離を表す「由旬(ゆじゅん)」、数を表す「那由他(なゆた)」などいろいろありますが、これらの中で時間を表す最長の単位を「劫(こう)」といいます。劫はサンスクリット語(古代仏教言語)の音写で、劫波(こうは)や劫簸(こうは)とも記されます。
それでは具体的にどの位の長さかというと、経典『雑阿含経(ぞうあごんきょう)、大智度論(だいちどろん)』に譬(たとえ)え話が二つ書かれています。
一つ目は「四方が千里の石山があり、この石山を長寿の人が百年に一度細くて柔らかい衣で撫でて、これを繰り返し、石山が無くなってもまだ一劫は終わらない。」
二つ目は「四方が千里の大きな城があり、その中を芥子粒(けしつぶ)で満たして、長寿の人が百年に一度芥子粒を一粒取り出し、これを繰り返し、芥子粒が全て無くなってもまだ一劫は終わらない。」
というようにいずれの譬え話も途方もなく長い時間を表しています。
さらにこの劫を一億倍すると「億劫(おっこう)」という単位になり、この億劫、本来はとても長い時間を表しましたが、やがて「時間が長くかかってやりきれない事やめんどくさい事」を「億劫(おっくう)」というようになったのです。
eお坊さんねっと 説話集より