説話(沢庵:たくあん)

日本各地にはさまざまな漬物があって、それぞれ作り方や味に特色があります。そうした漬物の中でも、沢庵漬けは最もポピュラーな漬物で、全国いたるところで漬けられています。沢庵漬けは「貯え漬け」がなまった言葉という説もありますが、『沢庵』の文字が当てられているのは、江戸時代の名僧沢庵禅師(1573〜1645)と関係があるのです。
沢庵禅師が五十七才、二代将軍徳川秀忠のとき、幕府は大徳寺妙心寺に圧迫を加え、沢庵はこれに抗議をしたため、山形県の上の山に流罪になりました。しかし、領主の土岐頼行(ときよりゆき)は、宅庵に帰依して手厚くもてなしました。宅庵は、この間に大根漬けの製法を覚え、後に江戸に戻ってから人々に広めたのが『沢庵漬』と呼ばれるようになったといわれています。宅庵は六十才のとき秀忠の死去にともなって流罪放免となり、三代将軍家光に重用され、よき相談相手でもありました。六十六才のとき、幕府は江戸品川に東海寺を建て開山に請じ、多くの人々に惜しまれながら七十三才の生涯を閉じました。
こんな和尚のエピソードを思い出しながら、沢庵漬けを味わ ってみるのもよいでしょう。
「ことばの旅」静岡県成道寺住職伊久美清智師著を参考&編集
「IT坊主の無駄方便」/eお坊さんねっと 説話集より