説話(今日を生きてる運のよさ)

現代は各種エンターテインメントに押されて聞く機会も少なくなりましたが、三味線の音で弾き語りされる都都逸(どどいつ)は、その時々の時代や人生を言い得て妙な生き様をとらえた名文句の宝庫です。例えば、
「くじも当たらず出世もなくて、今日を生きてる運のよさ」(青木仙十作)は傑作です。
人は、まわりを見て自分のことを知ります。世間的な常識のことを分別と言います。分別心をもつことは大人の条件ともいいますが、分別だけでは虚しさが残ってしまいます。
「上を向いたらきりがない、下を向いたら後がない」
この虚しさを、無理して満たそうとすると、上にはねたみ、下に向けてはおごりの心が生じます。
せっかちで落ち着かない分別を止めてみると、元気でいるからこそ、喜びも悔しさもあるのだと気づきます。すると、一時の悔しさにとらわれない新たな元気が得られます。人生に悔しいことがあったら、いったん引いてみたらどうでしょう。心の虚しさは、分別に基づいたつまらぬ拘りから来ることが分かります。心の置き所の転換、それがストレスを解消するのです。
eお坊さんねっと 説話集より
参考:「天台宗法話集より抜粋・編集